Excel資産管理の課題整理と改善のヒント|属人化・非効率を防ぐ考え方

目次

はじめに

「誰でも使える」「コストがかからない」「すぐに始められる」という理由から、多くの中小企業で業務や資産の管理にExcel が利用されています。

社内の PC やソフトウェア、ファイルサーバー代わりに使用している NAS や複合機、モニタなど様々な資産を Excel 台帳で管理している企業は多いのではないでしょうか。
しかし、便利なはずの管理台帳も社員や管理対象が増えるにつれて「更新が追いつかない」「ミスが多い」「共有が難しい」といった課題が表面化します。

本記事では、Excel台帳を使った管理がどのような課題を抱えやすいのか、そして属人化や非効率から脱却するために何から始めるべきかを整理します。

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Excel台帳が抱える4つの課題

一見シンプルなExcel台帳も、運用が長くなるにつれ思わぬトラブルを引き起こします。ここでは多くの企業が共通して直面する4つの課題を紹介します。

1. 更新ミス・二重入力の発生

更新ミスや二重入力は、Excel 台帳を使った業務を複数人で行っている場合に起こりがちです。

Microsoft 365 で提供される OneDrive で単一の Excel 台帳を適切に共有し同時編集できるようにしていれば、ある程度この課題は回避することができます。

しかし、Excel 台帳を編集する場合に、OneDrive 上で直接編集したり、PC にダウンロードして編集して再度アップロードしたり、Excel の共同編集機能で編集したりなど様々な方法で行うことができます。

それゆえに編集ルールを徹底していなければ、簡単にデータが破損したり古いバージョンでファイルを上書きしてしまいます。更新頻度や編集する人が多ければ多いほど、情報の正確性を維持することが難しくなります。

  • 情報を複数人で扱うと入力ミスや重複が増える
  • 更新履歴が追いにくく、誤りの発見が遅れる
  • データが増えるほど「何が正しいのか」分からなくなる

2. ファイル共有による混乱(バージョン管理)

この課題も編集ルールが徹底されていないことによって起こります。上述した通り、いくつかの編集方法があるため誤ってファイルを上書きしてしまうことが起こります。

正しい状態に戻すには、どの時点のファイルが台帳として正しいのか、どのデータを統合しなければいけないのか突き合わせていかなければなりません。

  • 最新版がどのファイルか分からなくなる
  • Teamsやメール添付でファイルが乱立
  • 過去データとの整合を取るのに時間がかかる

3. 属人化・引き継ぎ不全

Excel 台帳を特定の社員だけが管理していれば上述した課題は回避できますが、逆に属人化の課題が表面化します。Excel 台帳で正確かつ効率的に情報を入力するには、関数やマクロをうまく使う必要があります。

しかし、こうした関数やマクロを活用した Excel 台帳は複雑化しやすくなります。関数やマクロの動きを詳細に把握していなければ、簡単に台帳が壊れてしまうことがあります。

また、Excel 台帳を改善したり管理方法に変更があった場合に柔軟に対応することが難しくなります。

  • 台帳作成者しか理解していない数式やマクロ
  • 担当者不在時に更新が止まる
  • 退職・異動で「管理ノウハウごと」失われる
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4. 集計・分析の手間が膨大

Excel は本来表計算ソフトであるため、データを蓄積し分析することに特化していません。ピボットテーブルやフィルターなどで簡易的な集計、分析をすることは可能ですがそうした作業は複雑化しやすくなります。

入力間違いや関数での計算ミスなどで集計から漏れたりすることがあります。

不正確な集計、分析が起きると保存されているデータに誤りがあるのか、集計や分析のやり方に問題があるのか、原因を特定することに多くの時間と労力がかかります。

  • 手作業での集計・整理が必要
  • 間違い防止のためのチェック作業が増える
  • Excel自体の操作が”目的化”してしまう

ここまで Excel 台帳の課題をあげてきましたが、ちょっとした工夫である程度課題を解決することはできます。

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Excelは単体では優れたツールですが、正確に情報を管理することには限界があること、いずれは適切な管理ができるソリューションを検討しなければならないことに注意が必要です。

改善の方向性

Excel管理の問題を解決するために、まず意識したいのは「属人化をなくし、仕組みで管理する」ことです。
ツールを導入しただけでは問題は解決しません。複雑な作業や非効率なやり方をそのままにツールを導入すると、かえって業務が複雑化し非効率的になってしまいます。

業務の情報構造を整理し、共有・自動化のステップを踏んで、業務をツールで回せるように仕組み化する必要があります。

改善の3ステップ

  1. 情報を整理する
     重複や不要なデータを洗い出し、「何を・誰が・どのように」管理しているかを明確にする。
  2. 共有ルールを作る
     ファイル名・保存場所・更新頻度などのルールを統一することで、属人化を防ぐ。
  3. 自動化・可視化を進める
     マクロや関数に頼らず、集計・分析をシステム的に行える仕組みを整える。

業務改善を効果的に行うための詳しいステップについてはこちらの記事で紹介しています。

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Excel から始めるIT資産管理の考え方

Excel 台帳管理は「やり方が悪い」のではなく、「成長に伴って仕組みが追いつかなくなる」ことが大きな理由です。

例えば、Excel 台帳で管理を行う業務で社内の PC やソフトウェアのライセンス数、モニタや複合機などのIT資産を管理することは多いと思いますが、IT資産を管理するツールは、管理の仕組みを「個人の努力」から「組織的な基盤」に変える役割を担います。

Excel台帳の延長線上にある“仕組み化”の手段です。会社規模が大きくなり社員や担当者が増えたり、管理対象の増減が頻繁に起こると次第に台帳の正確性が損なわれてきます。

Excel管理を続けている企業の多くが、次に直面するのが「情報をどこまで一元化できるか」という壁です。管理対象がPC・ソフトウェア・契約・アカウントなどに広がると、Excelでは整合性や更新性、関連する情報を矛盾なく保つことが難しくなります。

このように、はじめは Excel の台帳一つで管理することができても、規模の拡大とともに会社の業務基盤として整備していく必要があります。

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まとめ

Excelは優れたツールですが、「何でもできる」がゆえに「何を管理すべきか」が曖昧になりがちです。台帳が複雑になるほど、人が補う作業が増え、結果としてミスや属人化を招きます。
そのために業務の棚卸し、可視化を行い効率化を進めると同時に、管理に特化した専用のシステムを活用した業務に変えていく必要があります。

効率化の第一歩は、「Excelで頑張る」から「仕組みで支える」へと発想を転換することです。

こちらの記事では Excel 台帳から始めた業務を効率化して、ツールを導入し業務の基盤として整備する流れを解説しています。

こちらのホワイトペーパーでは、Excel資産管理が招くガバナンスリスクとExcel台帳管理から脱却する3ステップを解説しています。

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